皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。
前回は「脂肪は食べても太らない!!!(詳しくはこちら)」として、脂肪制限ダイエットが効率の良いダイエット法ではないことを解説しました。
今日は、その第二弾としまして、ダイエットの誤った常識と炭水化物について考えてみたいと思います。
もくじ
炭水化物ってなんだ?
人間に必要な三大栄養素は糖質、脂質、タンパク質ですが、この中に「炭水化物」がありません。
では、炭水化物とはいったい何なのでしょうか?
炭水化物=糖質=糖類???
誤った常識の一番が、 炭水化物=糖質 と思われていることです。
加工食品の包装には「栄養成分」を表示することが規定されています。例えば、↓の様な表示を見たことがあるでしょう。
このラベルの下部に「栄養成分表示」とあって、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量などの表示があります。しかし、三大栄養素のひとつである「糖質」の表示はありません。
そのため、多くの人が「炭水化物が糖質だ!」と思ってしまうわけです。
国の規定によりますと、ここでの炭水化物の意味するものは、水分・タンパク質・脂質・灰分(ここで、灰分[カイブン]とはカルシウムなどのミネラル成分のことです)以外の成分をまとめて「炭水化物」と表示しているのだそうです。
炭水化物とは、その名が示すとおり、炭素(化学記号:C)と水(化学記号:H2O)からなる化合物のことで、その大部分が一般式として Cm(H2O)n で示されます。
この様に、Cm(H2O)nで表される成分として代表的なのが、糖質と食物繊維です。
つまり、炭水化物の中には、糖質と食物繊維が含まれている訳で、炭水化物から食物繊維を引いたものが糖質と言うことなのです。さらに、糖質は(狭義の)糖質と糖類に分かれます。
ですので、栄養成分表示を↓の様にしているメーカーもあります。
(shiawase-pan.net/境界型糖尿病-糖質制限/ より)
ダイエットをしている私たちにとっては↑の様に、炭水化物の中身を表示してもらった方が良いのですが、この様な表示になっている食品はまだまだ少ないです。
食物繊維と糖質と糖類
食物繊維と糖質と糖類は、表示では「炭水化物」としてひとくくりになっていますが、体内に吸収されますと、それぞれ違った働きをしています。(下図参照)
(http://dm-rg.net/news/2017/11/018380.html?pr=dmrg008より改変)
簡単に説明しますと、食物繊維は消化・吸収されませんので、カロリーはありません。食物繊維はさらに不溶性と水溶性に分けられます。
不溶性食物繊維:野菜などに含まれ、糸状のものや多孔質のもの↓があり、穀類、野菜、豆類、キノコ類、果実、海藻、甲殻類の殻(エビやカニ)に多く含まれます。胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、お通じがよくなります。大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などの善玉菌のえさとなり、腸内環境が改善し整腸効果があります。概して、発酵性は水溶性食物繊維の方が高いです。
←トウモロコシの食物繊維
水溶性食物繊維:ネバネバした感じが特徴です↓。昆布、わかめ、こんにゃく、果物、里いも、大麦、オーツ麦などに含まれています。そのネバネバ性により胃腸内をゆっくり移動していきますので、お腹がすきにくく、食べすぎを防ぎます。また、糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑えます。不溶性食物繊維と同様に、大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などの善玉菌のえさとなり、腸内環境が改善し整腸効果があります。
←大麦の食物繊維
甘い糖類と甘くない糖質
広義の糖質は、さらに甘く感じる糖類と甘さを感じない糖質に分類されます。糖質は炭水化物ですので、その骨格は炭素(C)と水素(H)と酸素(O)で出来ています。
いわゆる糖が体内に吸収される時の最小単位を「単糖」と呼び、炭素の数が3個~7個程度で構成されています。単糖の構造の例(グルコース)は↓の様になっています。
← グルコースの構造
この単糖が2個、3個・・・と繋がっていくと、二糖類、三糖類、多糖類・・・となっていきますが、いわゆる糖類は単糖類と二糖類のことで、基本的に「甘い」と感じます。いわゆる砂糖やブドウ糖、蜂蜜などがこれにあたります。
↑ https://food-cooking.jyuusya-yoshiko.com/tou-siturui/より
単糖が3個以上繋がったものを狭義の糖質と呼びます。この(狭義の)糖質は更に少糖類(オリゴ糖)と多糖類に分類されます。これらの糖質は基本的にそれほど「甘い」と感じません。
少糖類(オリゴ糖):3~10個の単糖が繋がったものを言い、そのほとんどはヒトの酵素では分解されないため、消化吸収されません。甘さは砂糖の50%以下です。小腸で分解されずに大腸にとどくと、腸内細菌によって発酵を受け、短鎖脂肪酸であるカプロン酸などが産生されます。つまり、糖質ではなく、脂質として吸収されますので、少糖類のカロリーは糖類の50%以下となります。
多糖類:11個以上の単糖が繋がったもので、グリコーゲン、セルロース、デキストリン、デンプンなどが代表的なものです。食物繊維もこの多糖類の延長にあります(セルロースは食物繊維の成分です)。デンプンなどをなめると解ります様にほとんど甘さを感じません。多糖類は酵素で分解され、単糖や二糖として吸収されます。多糖類の特徴は水を大量に保持する能力があることです。1gの多糖類は最大で99gの水を保持すると言われています。
糖質の中にはさらに、「糖アルコール」という成分があります。アルコールと付いていますが、いわゆる酒類に含まれている酔うアルコールとは違うものです。糖アルコールにはグリセリンやマンニトール、ソルビトールなどが有り、虫歯を防ぐ成分としてCMなどで宣伝されているキシリトールも糖アルコールです。
いわゆる天然の甘味料ですが、体内に吸収されにくいことで有名です。主に甘味料として使われていますが、薬品や保存剤としても使われます。基本的に体に害はありませんが、糖アルコールの特性として、お腹が緩くなる傾向があります。
炭水化物ダイエットのポイント
以上に示しましたことをまとめると↓の様になります。決して 炭水化物=糖類 ではないことを理解してください。
↑ https://fufufu.rohto.co.jp/feature/39941/2/より
炭水化物ダイエットだからと言って、無闇に炭水化物を食べないのはダメです。炭水化物ダイエットのポイントは、単糖類などの吸収の早い糖質を制限することです。逆に、食物繊維や少糖類(オリゴ糖)は善玉菌を増やすなどの腸内環境の改善に役立ちますので、積極的に摂る様にしましょう。
カロリー制限は無意味
ダイエットと言いますと、摂取カロリーを気にする人が多いですが、これも大いなる誤解です。
摂取カロリーを極端に制限してしまうと、脳が「飢餓状態に入った」と認識し、身体を省エネモードに切り替えてしまいます。そうすると、減って欲しいはずの脂肪は使わずに、エネルギー消費の多い筋肉を分解してしまいますので、カロリー制限は本末転倒のダイエット法と言えます。
ダイエットに必要なのはカロリー計算ではなく、摂取する栄養素の配分です。この配分さえ間違えなければ、人並に食べても太らないダイエットが可能になります。
血糖の急激な上昇を抑える
単糖類や二糖類は吸収が早く、吸収されると直に血糖として身体中を巡ります。そして血糖が急激に上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンは血糖をエネルギーとして筋肉や肝臓に吸収させますが、血糖が急激に上昇すると、それだけでは血糖を消費しきれないので、余った血糖を中性脂肪に変えて、蓄えていきます。つまり、血糖を急激に上昇させると、インスリンによって、血糖を脂肪として貯蔵するスイッチがONになり、結果として太ることになります。
ダイエットでは、血糖値を急激に上げてしまう栄養素(主に単糖類や二糖類、多糖類など)の摂取を控え、血糖の上昇を緩やかにすれば、血糖を脂肪として貯蔵するスイッチが入りにくいことにまります。
この様に、血糖の上昇を緩やかにすれば、人並みのカロリーを摂取しても太りにくいと言うことを憶えておきましょう。
理想的な食事内容
理想的な食事とは、必要な三大栄養素と必要なカロリーはちゃんと摂るが、血糖を脂肪として貯蔵するスイッチが入りにくい内容にすれば良いのです。
その様な食材の筆頭がタンパク質です。タンパク質は余った分が体脂肪に変わりにくい性質があり、また、体外に排出されやすいのです。しかも糖質や脂質と違って、消化・吸収の際に消費されるカロリーの割合が約30%と非常に多いのです。ですので、タンパク質の食材を中心としたメニューが最も太りにくい食事となります。
タンパク質の食材の代表は「肉類」です。脂肪分の少ない肉としては、牛や豚のヒレ肉や鶏の胸肉やささみ、レバーなどです。
また、魚介類も脂分が少なく、さらには、血液をサラサラにするEPAやDHAなどの成分(不飽和脂肪酸)が含まれていますので、肉類よりもお勧めかもしれません。食べても太らない例としては、マグロの赤身、カツオ、鰹節、タコ、イカ、エビなどです。
さらに、タンパク食材と言えば、畑の牛肉と言われる「大豆」があります。枝豆や豆腐、納豆などが代表的な食材です。ただし、大豆以外の豆類はかなりの量の糖質や脂質を含んでいますので、注意しましょう。
もうひとつ忘れてはならないタンパク食材として「タマゴ」があります。タマゴ(鶏卵)は食物繊維とビタミンC以外の栄養素が全て含まれており、スーパーフードと言われています。また、卵黄にはビタミン・ミネラルや脂質、卵白にはタンパク質が豊富です。
次に、これらのタンパク食材と一緒に食べたいのが「野菜類」です。野菜は、その殆どが水分と食物繊維ですので、極めて低カロリーの割には満腹感が得られます。お勧めは葉物のキャベツや白菜、ほうれん草、小松菜などです。さらに、ブロッコリーやカリフラワー、ショウガなども効果的です。ただし、根菜類のジャガイモやサツマイモ、山芋などはデンプンなどの糖類が多いので、摂りすぎに注意しましょう。
そして、世界的に見ても日本人に特有な食材が「海藻」です。海藻も野菜と並んで食物繊維が豊富ですし、代謝を高めるヨウ素やカルシウムが多く含まれています。ワカメ、ノリ、もずく、寒天などがお勧めです。ただし、コンブやヒジキは糖質が多く含まれていますので、摂りすぎに注意しましょう。
どうですか?以上に挙げた食材を組み合わせるだけで、かなりのメニューが出来ますし、人並みに食べても太りにくい食事内容となります。
次回は、脂質について見ていきましょう。
デハデハ