皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

9月に入って、少しは秋の気配を感じるようになってきました。

この様な季節の変わり目に注意しなければならないのが「風邪(cold, common cold)」です。私の周りの知人や受講生も、風邪気味の人が増えています。

今日は、ヒトはなぜ風邪を引くのか?と言うことを考えてみたいと思います。

 風邪の原因はウイルス

風邪を引く原因は、風邪ウイルスに感染するからです。

ウイルス(virus)は細菌(bacteria)ではありませんので、抗生物質(anti-biotics)を飲んでも治りません。

 夏風邪の原因ウイルス

風邪の原因となるウイルスとしては200種類ほど知られているそうですが、そのほとんどは低温で乾燥した環境を好みますので、冬風邪の原因となります。

ところが、一部のウイルスは多湿の環境を好むので、これらが夏風邪をもたらします。

代表的な夏風邪ウイルスとしては・・・

 1)アデノウイルス(adenovirus)

夏風邪ウイルスの代表格で、喉の痛みや発熱、激しい咳などの呼吸器系の症状を引きおこします。名前の由来はアデノイド(adenoid)で、扁桃腺(へんとうせん)などを意味します。子供が掛かりやすく、特にプールで感染することが多いので別名「プール熱(咽頭結膜炎)」とも呼ばれます。

 2)エンテロウイルス(enterovirus)

呼吸器系の粘膜から感染して、腸内で繁殖します。ちなみに、エンテロ(entero)は小腸の意味です。そのため、お腹の調子が悪くなったり、嘔吐や下痢などの消化器系の症状が出てきます。手足口病の原因とも言われています。

豆知識: 手足口病(hand-foot-and-mouth disease)とは

7月~8月ごろにピークを迎えるウイルス性の感染症で、80%程度の患者が小児です。エンテロウイルスとコクサッキーウイルスが主な原因と言われていますが、変異を起こした亜型が多数ありますので、何回も感染することがあります。

口の中・手のひら・足の裏や甲に水疱性の発疹ができ、発熱や爪がはがれることもあります。水疱は、かさぶたにならずに治る場合が多く、1週間程度でなくなります。口の中の水疱が破けて、そこが口内炎になることが多いです。

 3)コクサッキーウイルス(coxsackievirus)

上のエンテロウイルスの親戚で、呼吸器系の粘膜から感染して、腸内で繁殖します。喉の痛みと高熱を引きおこすことが多く、手足口病やヘルパンギーナ(のどが真っ赤に腫れる高度の炎症を伴う疾患)の原因と言われています。

(http://www.good-doctors.net/doctor/41.html より)

「風邪は万病のもと」と言われますが、特に夏風邪を引くとさらに重症の合併症を引きおこすことがありますので、大人も子供も注意深いケアが必要です。

 風邪を引く理由

まず、上記の様な風邪ウイルスに感染することが直接の原因ですが、自分の身体の免疫システムが正常であれば、そう簡単には発症しません。

つまり、何らかの理由で免疫能が低下している時に風邪ウイルスに感染してしまうことが最大の原因です。

では、どういうときに免疫能が低下してしまうのでしょうか?

 最大の原因は体温の低下!

特に夏場で免疫能が低下する原因の筆頭は、体温の低下です。

寝苦しい蒸し暑い夜に、クーラーをガンガン掛けて寝てしまうと、寝冷えに似た体温の低下を起こします。さらに、クーラーによって過度の除湿が行われていると、寝ている間の口呼吸で口の中が乾燥し、口腔内の粘膜が無防備な状態になります。

手足が冷えてしまうと、身体の自然反応として、体温を逃がさないように、毛細血管を収縮させて血液が流れないようにします。すると、血液の流れに乗って身体中を巡回している白血球(好中球やリンパ球、NK細胞など)が身体の隅々まで行き渡らなくなります。このため、相対的に免疫による防御能が低下していきます。

この様に免疫力が低下すると、目や口、鼻などの粘膜に取り付いたウイルスを除去しきれなくなり、ウイルスの侵入と繁殖を許してしまうことになる・・・ということです。

海水浴で海やプールに長時間浸っているのも、体温の低下を招く原因となりますので,適度に陸に上がって体温を戻すことが大切です。

 風邪を引くとなぜ、熱が出て、震えがきて、咳が出るのか?

風邪の時の主な症状として;

  • 熱が出る
  • 寒気がして身体が震える
  • 鼻水が出る
  • 咳が出る
  • お腹が下る

などがありますが、この様な症状は全て、免疫力を高めるための身体の反応なのです。ひとつずつみていきましょう。

 熱が出る訳

身体の中にある酵素(emzyme)はその活性が最も高まる温度の範囲が決まっていて、ほぼ37℃~40℃(ヒトの平熱よりちょっと高め)の間でピークになります。

(https://ja.wikibooks.org/wiki/高等学校生物/生物I/細胞の構造とはたらき より)

白血球を含む細胞の活動を支えている様々なタンパク質は、大なり小なり何らかの酵素の作用を受けていますので、酵素の働きが最高になれば、免疫細胞の活動も活発になると考えられます。

そして、酵素の活動がピークとなる温度は、上↑ の図から解ります様に、いわゆる「熱がある(38℃以上)」状態の時なのです。

一説によりますと、体温が1℃下がると免疫細胞の活動量が30%~40%下がると言われています。[ただし、免疫細胞の活動量を客観的に測定する方法はまだ確立されていません。]

一方で、ほとんどの風邪ウイルスは、環境が32℃~33℃程度の時が最も感染力が高まり、温度が上がるのに比例して感染力は低下していきます。

以上の事から、① 免疫細胞の活動量を上げ、②酵素活性を上げ、③ウイルスの感染力を下げるために、熱が出て体温を上げようとするのです。

ただし、42℃を越える様な高熱が続くと、酵素が働かなくなり、身体に悪影響が出てきますので、適度な発熱に保つようにコントロールすることが大切です。

 寒気がして身体が震える

白血球が風邪ウイルスと戦闘を始め、マクロファージなどがウイルスを貪食(どんしょく:phagocytosis)すると、それに伴って「内因性発熱物質(endogenous pyrogen)」を放出します。この物質が脳の視床下部(体温調節を司っている)にとどくと、身体全体の発熱スイッチが入ります。このスイッチが入るときにいわゆる悪寒(おかん:chills)という寒気を感じるのです。

悪寒を感じるとと震えが起こりますが、この震えは筋肉が細かくれん縮することで起こります。筋肉は体内で一番の発熱器官ですので、その筋肉をれん縮させることで体温を上げようとしているのです。

この様に、悪寒も震えも体温を上げようとする身体の反応ですので、厚着や布団をかぶることで体温が上がれば、自然と治まります。

 鼻水か出る

風邪ウイルスは、鼻粘膜に付着して体内へ侵入して行くことが多いです。そのため、鼻粘膜上のウイルスを洗い流すために、多量の鼻水を分泌してウイルスを排出しようとしているのです。その際に、ウイルスに汚染された鼻粘膜の細胞も剥がれ落ちます。

ですので、風邪を引いたときの鼻水中にはかなりのウイルスが混ざっている可能性がありますので、手などで拭くのではなく、ティッシュペーパーなどで拭いて、直ぐに捨てましょう。ティッシュペーパーの使い回しや、ハンカチで何度も拭うのはよろしくありません。

 咳が出る

これも、喉や気管の粘膜に付着したウイルス(主にアデノウイルス系)を体外に放出するための反応です。従いまして、患者の咳やくしゃみには多量のウイルスが混ざっていると考えましょう。

ウイルスの多くは、接触感染で伝染しますので、愛するお子さんやパートナーであっても、風邪を引いているときの咳やくしゃみを直接浴びない様に気をつけましょう。

 お腹が下る

これも、エンテロウイルスなどの腸内で繁殖するウイルスを速やかに体外へ排泄するための反応ですので、変に我慢するのではなく、できるだけ早く排泄しきることが大事です。

ただし、下痢などが長く続くと脱水になったり、栄養不足になりますので、こまめに水分を取って、栄養価の高いものを少しずつ食べるようにしましょう。

 

以上の様に、風邪に伴う諸症状は免疫力をアップさせるためと同時に、風邪ウイルスを速やかに体外へ排出させるための反応ですので、無理に押さえ込んだり我慢するのではなく、体温を上げる(37℃~38℃程度)工夫をすると、治まってきます。

 なぜ、風邪の時は「引く」というのでしょうか?

ちょっと気になったのですが、インフルエンザや気管支炎の時は「かかる」というのに、風邪の場合は「引く」という理由は何でしょうか。

日本語源大辞典(小学館)によりますと、古代中国では風(wind)は大気の動きであると共に、人体に何らかの影響を与えるもの考えられていたようです。したがって、大地を吹き渡る風が運んでくる邪気を体内に「引き込む」ことで風邪という病になると信じられていました。

以上の様に 邪気を引き込む ということから、風邪の時は「引く」というようになった様です。

では、日本でこの風(wind)に病気としての「風邪」の字が使われ出したのはいつ頃からだったのでしょうか?

一説によると、平安時代頃に中国から渡来した様で、竹取物語に次の様な下りがあるそうです。

「からうじて起き上がり給へるを見れば、かぜいと重きひとにて、腹いとふくれ、こなたかなたの目には、すももをふたつ付けたるやうなり」

昔の風邪はかなりの重症になっていたようです。

鎌倉時代になると、からだに悪い影響をおよぼすことから風に邪気の「邪」の字をつけて、「風邪(ふうじゃ)」と呼ぶようになった様です。明治になると、この風邪を「かぜ」と読むようになったということです。

 風邪は病名ではない!

風邪(かぜ)というのは一般的な呼び名で、病院のカルテ等では「風邪症候群」とか「上気道炎」と記載されます。つまり、医学的には「風邪」という病名はないのです。

医師の解釈としていわゆる風邪は「2~3日で治る症候群」という理解です。2~3日で治らなかった場合に、改めて診断を下して、正式な新たな病名を付します。

つまり、医療従事者の認識は「(いわゆる)風邪は放っておけば治る」もので、治らない場合は風邪ではない! と言うことだそうです。

風邪に効くクスリはありませんので、病院側としてもせいぜい鎮痛薬や解熱剤を出す程度です。病院で診察を受けて「風邪ですネ」と言われたら、家に帰って、暖かくして体温を上げ、水分と栄養価の高い食物を少しずつ食べておけば、3日程度治る・・・ということです。

3日経っても治らない場合は、別の病気の可能性がありますので、改めて受診して治療を受けてください。

デハデハ

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