皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

今日は、昨日のメディカル翻訳講座で話題に取り上げたanyの訳し方(それとついでにsomeの訳し方)について、お話ししましょう。

 Anyは「あれもこれもどれも・・・」

Anyを英語辞書で調べると・・・

まずは名詞として

【代名-1】[肯定文で]どれでも、誰でも

代名-2】[疑問文で]誰か、いくらか

代名-3】[否定文で]どれも、少しも、誰も

次に形容詞として

【形-1】[肯定文で]どの、全ての、あらゆる

【形-2】[疑問文で]いくら[いくつ・何人]かの(訳さない場合が多い)

【形-3】[否定文で]どんな、少しの

と言う具合に場合分けして説明している辞書がほとんどではないでしょうか。

さらに、高校や中学の英語の時間には「肯定文のsomeは、疑問文や否定文ではanyになります」ともっともらしいウソを教えられます。

English nativeではない日本人には、ある意味仕方のないことかもしれませんが、英語の語句を対応する日本語の語句に結びつけて1対1で覚える癖があります。

例えば、comeを「来る」、goを「行く」と1対1で覚えてしまうのです。

英単語を覚えるときは、対応する日本語の単語を覚えるのではなく、その単語のイメージを理解することがポイントです。

comeのイメージは:あるもの(ところ)に向かっていく、もしくは、あるもの(こと)が近づいてくる ⇒ 私とあるモノ/コト/バショの距離が縮まる

goのイメージは:あるもの(ところ)から離れていく、もしくは、あるもの(こと)が遠ざかっていく ⇒ 私とあるモノ/コト/バショの距離が広がる

というイメージで覚えておくと、和訳や英訳の際にそのイメージに合う適切な訳語が浮かんできます。

 anyのイメージは?

たしかに、anyは否定文や疑問で使われている場合が多く、否定的な感じがありますが、次の英文の様に、肯定文でも使われます。(和訳文は文末にあります)

No deaths, SAEs, or discontinuations of investigational product due to an AE (DAEs) were reported for any healthy volunteer during this study.・・・(1)

(DAE:discontinuations of investigational product due to an AE=被験薬の投与中止に至った有害事象)

否定文にも疑問文にも、まして、肯定文にも共通するanyのイメージと言うものが、果たしてあるのでしょうか?

これまで、私が出会ったanyを使った英文に共通していたイメージは・・・

(あれも、これも)どれでもいいけど

です。

例文で考えてみましょう。

We couldn’t buy any flowers.

⇒(バラもチューリップもユリも)どれでもいいけど花を買うことができた・・・じゃないヨ!=何の花も買えなかった。

You can use this card to withdraw money at any cash machine.

⇒(銀行でもコンビニでも駅でも)どこでもいいけど、このカードで支払機からお金が引き出せます。=このカードで、どの支払機からでもお金が引き出せます。

Have you seen any good movies recently?

⇒ 最近、(ライオン・キングでも、天気の子でも、おっさんずラブでも)どれでもいいけど、グッドな映画を観たかい?=最近、何かグッドな映画を観たかい?

という感じです。特定しない(あるかどうか解らない)どれでもいい、モノ/コト/バショがある・・・というイメージです。

従いまして、肯定文では、「あれも、これも、どれでも」ですから、「全ての」とか「任意の」となります。

一方、否定文では、あれも、これも、どれでも・・・じゃないヨ」ですから、「何も」とか「全く」となりますし、疑問文でも、「あれも、これも、どれでも・・・なの?」ですから、「いくらか」とか「幾つか」となります。

 メディカル翻訳での決まり文句

メディカル翻訳、その中でも特にSafety関連では、anyを「何もなかった」という意味で使っている場合が多いのですが、このときの和訳文にはあるパターンが見られます。

(臨床試験などで)死亡例や重篤な副作用が何も出なかった場合

死亡例や重篤な副作用は なんら 報告されなかった。

(臨床試験などで)有害事象や副作用の発現症例が全例、無事に回復した場合

いずれの 患者(被験者)も回復した。

では、次の場合はどの様な表現になると思いますか?(解答は文末にあります)

(臨床試験などで)臨床検査値に異常があった被験者がいなかった場合

臨床検査値異常を示した被験者は       認めなかった。・・・(2)

 

 someは「オレの好みを適量・・・」

では、anyの相方のsomeのイメージはどの様なものでしょうか? 同様に、Someを英語辞書で調べてみますと・・・

まずは名詞として

【代名-1】いくらか、多少

【代名-2】一部(の人々)

【代名-3】[アダルト]セックス

次に形容詞として

【形-1】 いくらかの、幾つかの、いくばくかの

【形-2】 ある

【形-3】(良い意味で)大した、なかなかの、かなりの(量の)

と言う具合に説明している辞書がほとんどではないでしょうか。

さらに、高校や中学の英語の時間には「疑問文のanyに答えるときは、someになります」ともっともらしいウソを教えられます。

そんなことはなくて、someも肯定文や否定文、疑問文でも使われています。

それらから私が得たsomeのイメージは

オレの好みを適量・・・

というものです。

いくつかの例文で見てみましょう。

Can I have some milk in my coffee, please?

⇒ 私のコーヒーにミルクを オレの好みの適量だけ 入れてください。=私のコーヒーにミルクを少々入れてください。

Tonight, I’m going out with some friends of mine.

⇒ 今夜、 オレの好みの数人だけ の友人と出かけるぜぃ。=今夜、数人の私の友人と出かけます。

Some patients don’t like to receive anesthesia at the operation.

⇒ その手術では オレの好みの適量の 患者が麻酔を好まない。=その手術では麻酔を好まない患者もいる。

という感じです。

では、最後に、次の英文のsomeをどう訳しますか? (解答は文末にあります)

In addition to the principles expressed in this guideline, some special populations may deserve specific considerations.・・・(3)

 

如何でしたでしょうか?

anyとsameは英文のいたるところに出てきて、色々なニュアンスで使われていますが、その根底にあるイメージは常に共通しています。

皆さんも、英単語や英熟語を覚えるときは、和訳語を1対1で覚えるのではなく、自分なりのイメージで理解しておくと、適切な翻訳が出来る様になるでしょう。

デハデハ

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課題文の標準解答:

(1)No deaths, SAEs, or discontinuations of investigational product due to an AE (DAEs) were reported for any healthy volunteer during this study.

⇒ 本試験の期間中に、死亡、重篤な有害事象(SAE)、被験薬の投与中止に至った有害事象(DAE)等はいずれの健康ボランティアでも報告されなかった。

(2)(臨床試験などで)臨床検査値に異常があった被験者がいなかった場合

臨床検査値異常を示した被験者は(を) なんら 認めなかった。

(3)In addition to the principles expressed in this guideline, some special populations may deserve specific considerations.

⇒ 本ガイドラインに示した原則に加えて、ある(オレの好みの適度に)特殊な集団にも特別な配慮が必要であろう。

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