皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

昨日、電車(JRと地下鉄)に乗っていまして、何気なく車内広告を見ていましたら、「加齢臭」に関する広告がかなり多く見かけられました。

そこで、加齢臭(おやじ臭)について調べてみましたところ、かなりの誤解と偏見があるようですので、ちょっと解説してみたいと思います。

 そもそも加齢臭とは?

加齢臭とは体臭の一種で、40歳を過ぎた壮年~老年期に発現してくる現象です。

つまり、老化現象のひとつで、老眼になったり、耳が聞こえにくくなったり、物忘れが多くなったりするのと同じで、男女を問わずほとんどの人に発現してきます。

ただし、老眼や物忘れと根本的に異なることは、(本人は気にならないのに)周囲の人々を不快にさせる・・・という点です。

壮年~老年期の人の匂い(体臭)を、ひとまとめに加齢臭と呼んでいますが、これも誤解で、加齢臭は体臭の一部にすぎません。体臭を構成する匂いとしては次のものがあります。

  1. 呼気(肺から出ていく息)
  2. 汗・皮脂
  3. 皮膚ガス
  4. 口臭
  5. 加齢臭

そしてこれらの体臭は、赤ちゃんを含む若い人にもあります。

赤ちゃんが乳臭いのも、ニンニク料理を食べた人やタバコを喫っている人が匂うのも、お酒やコーヒーを飲んだときのオシッコの匂いも、これら全てが体臭の構成要素なのです。

 生物に体臭は必要不可欠

まず、しっかりと認識していただきたいのは、人間を含む動物に体臭は不可欠であり、誰もが持っているものなのです。そして、匂いは様々な情報を発しているのです。

「自分は匂っていない!」と思っているあなた、良い匂いかどうかは別として、あなたにも特有の体臭はあるのです。

その証拠に、ペットのイヌがあなたを見分けている最も大きな要因はあなたの匂いなのです(その他に振舞[視覚]や足音[聴覚]も多少影響しています)。

イヌやネコは自分のオシッコ(これも体臭のひとつ)でマーキングしたり、キツネやハムスターは臭腺から出る自分の匂いを周囲にマーキングすることで縄張りを表現しています。そして、このマーキングは自分の死活に関わる重大な事なのです。

また、多くの動物は発情期が来たことを体臭を強くする(特に雄)ことで、周囲に知らせていますから、子孫を残すと言う面からも体臭は大事なものです。女性の体臭が生理の前後で強くなる(排卵期~黄体期)傾向にあるのもこの生物活動によるものです。

一方、人間の雄(男性)は何時でも交尾(SEX)出来ますので、365日発情しています。そのせいで、常に女性より体臭が強くなっているのです。さらに、発情していない雌(女性)にとって、発情している雄(男性)は忌避すべき対象ですので、体臭の強い男性は特に女性から嫌われるのです。

つまり、生きて生物活動を続けている限り、体臭は常に身体から発せられていると言うことで、体臭がないと言うことは生きていない・・・と言うことです(死んだ人の「死臭」は一種の腐敗臭です)。

問題は、その体臭が周囲の人々を不快(いわゆるおやじ臭など)にするか、心地よく(恋人の匂いとかジャコウジカ等のジャコウの香りなど)するかということです。

 聞き慣れない「皮膚ガス」とは

匂いの専門家である東海大学理学部化学科の関根嘉香教授のお話しによりますと(詳しくはこちら)、食物の栄養分と共に血液に入った様々な匂い成分や体内で分解された様々な匂い成分が皮膚から気体(ガス)として発散されているのが皮膚ガス・・・なのだそうです。

私たちの身体からは様々なガス(気体)が放出されており、その代表的なものが呼気(肺から出ていく空気)やオナラ(放屁)で、これらを生体ガスと呼び、その内のひとつが皮膚ガスです。

食事で食べたニンニクの匂い成分やお酒(正確には、アルコールが分解されたアセトアルデヒド)の匂い成分、タバコの匂い成分なども血液を介して皮膚ガスとなって、周囲に発散されています。

皮膚ガスには以下の三種類があるそうです↓

(出典:https://emira-t.jp/special/6855/ EMIRA:体臭のもと「皮膚ガス」は体の内部を知るバロメーター)

関根教授によれば、皮膚ガスには100種類以上の匂い成分が含まれていて、その多くが体内の代謝物(分解物)だと言うことで、その全てが重要な生体情報なのだそうです。

例えば、お酒を飲み過ぎた時には、エタノール(アルコール)やその分解物のアセトアルデヒドが皮膚ガスとなって放出され、それが体臭として認識されます。

また、疲れている時にはオシッコに混じっているアンモニアが皮膚ガスとなって放出され、なんとなくオシッコ臭い体臭となります。

さらに、糖尿病の患者さんからは特有のにおいがすることがありますが、それをアセトン臭と呼んでいます。これは体内の脂質が代謝されたアセトンが血液の中に流れ出し、直接体外に出てくるものです。糖尿病の患者さんはエネルギーの基となる糖の利用がうまくできず、代わりに体内の脂質を分解してエネルギーとしています。そのため血中にアセトンが増えるということが知られています。

これらは、血液由来の皮膚ガスになります。

別の例では、激しい運動をしますと、筋肉内に乳酸(lactic acid)が溜まってきますが、溜まった乳酸が汗と共に身体の表面に出てきます。乳酸自体がガスになる(揮発性)ことはないのですが、これが皮膚の常在菌に食べられ、分解されて、ジアセチル(diacety)という匂い成分になります。ジアセチルはバター臭があり、バター風味のポップコーンに香料として使われています。

このジアセチルは筋肉の活動が盛んな30~40代で増え、筋肉の活動が衰えてくる5060代以降に段々と減っていきますので「ミドル臭」などとも呼ばれます。ただし、この匂いは不快なものではなく、どちらかというと心地よい匂いですので、いわゆる「おやじ臭」には含まれませんが、加齢臭の一種です。

もうひとつの例は、おやじ臭の主な原因のひとつと言われている「2-ノネナール」です。これは皮膚の表面に分泌された皮脂が紫外線によって酸化されて出来る分解物です。

皮脂は、肌の上に薄い膜状に広がっていて、保湿したり外界の刺激から肌を守ったりするバリア機能の役割を果たす大切なものです。ですので、男性だけでなく女性でも分泌されています。しかし、皮脂は、年齢を経るに従って量や質が変化してきます。

皮脂の主成分は不飽和脂肪酸(オリーブオイルなどの様に常温でサラサラです)と飽和脂肪酸(バターやチョコに含まれている固形~ドロッとした成分です)ですが、若い内は皮脂の量が多く、不飽和脂肪酸が優勢です(つまり、サラッとしています)が、年齢を重ねると共に量が減って飽和脂肪酸が優勢になってきます(つまり、ドロッとしています)。そして2-ノネナールはドロッとした皮脂に多く含まれています。

この2-ノネナールは、油臭くて青臭いニオイを発します。熟成したビールやソバの重要な芳香成分であり、オリス(ニオイアヤメ)、脂肪そしてキュウリの匂い成分でもあります。

これらは、表面反応由来の皮膚ガスです。

豆知識:「加齢臭」という言葉を使ったのは資生堂

加齢臭は資生堂が商標権を持っている言葉で、20年ほど前に作られた造語です。年齢を重ねた人から出る不快なニオイ物質を資生堂が特定し、その臭いを「加齢臭」と名づけたのです。

しかし、「加齢」とは年齢を重ねたと言う意味ですが、決して老人やおじさんを指す言葉ではありません。つまり、この世にオギャーと生まれた時から加齢は始まっているのです。一方、年齢を重ねた人に見られる様々な老いの現象は「老化」と呼ばれるもので、加齢は明らかに違うものです。

知ってか知らずか、資生堂はこの老化のニオイに対して「加齢臭」という失礼な名前を付けたのです。😠😠😠

 

 アンドロステノンとは

最近注目されているアンドロステノンは、女性にとって不快な男性の体臭の原因物質として2004年にライオンが特定したと発表したステロイドの一種で、性ホルモンに分類されています。

ライオン社によると、アンドロステノンは腋窩のアポクリン腺から分泌されるアンドロステロン(男性ホルモン)が皮膚常在菌によって分解されることで発生するとのことですので、表面反応由来の皮膚ガスの一種です。

ライオンが行った実験では、20代~30代の男女50人にアンケート調査を実施したところ、「女性の体臭を不快と感じた」ことのある男性はわずか12%であったのに対し、「男性の体臭を不快と感じた」女性は100%という結果であったという。

そこで、この不快に感じる原因物質を特定したところアンドロステノンが浮上してきたと言うことらしいです。

しかし、アンドロステノン自体の存在はかなり前から解っていました。

養豚場では古くから交尾に使用されています。 アンドロステノンの入ったエアゾールをメス豚に吹きかけると、交尾を受け入れる体制になる、つまり、発情するのだそうです。

一方で、海外のある実験によりますと、アンドロステノールを塗ったマスクをつけた男性群に、女性の写真を見せたところ、何も塗っていないマスクをした男性群よりも、その写真の女性に「女性らしさ」を 感じる割合が高かったと言う結果が出ました。 この作用は男性に限らず、女性にもこの実験を試したところ、同様の結果が得られたということです。(https://sawayaka.ds-comp.com/nioi2.html)

また、アンドロステノールにはメスがオスを発情させて具体的に求愛行動を誘発するような作用があることが解っています。

ある女性がある男性の体臭を嗅いだとき、「ムッとして」、 不快と「意識させ」、その男性を「避ける」といった具体的行動に繋がります。 これは、一見嫌っているような行動ですが、文化的・社会的に教育された現代では、女性がその様な求愛行動を取ることは避けるべき・・・との倫理観が出来上がっていますので、その様な本能的な行動を抑制するためにその男性を「避ける」という行動を取るのです。

つまり、アンドロステノールは発情の引き金の一因になっていると考えられ、一種のフェロモンと言っても差し支えないかと思います。

本当に女性が男性の体臭を忌み嫌って、避けるならば、この人間社会はとっくのとうに滅んでいるはずです。

 おやじ臭を防ぐには

以上に説明しましたように、加齢臭の原因と言われている2-ノネナールやジアセチル、アンドロステノールが単独で、体臭(おやじ臭)を発散している訳ではなく、それらを含んだ生体ガスや皮膚ガスの統合として、体臭を形成しているのです。

そして、一番のおやじ臭の要因は、その特定の男性に対する(特に女性の)イメージです。

上述の様に、加齢臭は一種の老化現象ですから、福山雅治さんにも木村拓哉さんにも加齢臭があります。しかし、福山さんや木村さんのファンを含む周りの人達はその体臭を「おやじ臭」とは呼びませんし、不快に感じている人もおそらくはいないはずです。

一方で、電車の中で有り体もなく酔っ払っていたり、駅でつばを吐いたり、食後に爪楊枝でシーハーしたり、スーツの肩にフケや抜け毛が沢山あったり、セクハラやパワハラを繰り返したりする男性が、福山さんや木村さんと同じ体臭をしていても、周りの人々(特に女性)は蔑みの意味を含めてそれを「おやじ臭」と呼び、その男性を「避ける」という行動を取るのです。

つまり、おやじ臭(加齢臭)とは、その個人の精神的・身体的な清潔度を示しているバロメータと言うことが出来ます。

 具体的な対策

体臭を完全に消すことは出来ませんが、周りの人を不快にしないレベルに抑えることは出来ます。

そのポイントは「食事、運動、ストレス、入浴・洗濯」です。

  • 食事

肉を食べると、においになりやい。これに対し、野菜には加齢臭を防ぐような成分が含まれています。老化は体内の活性酸素が主な原因のひとつですから、活性酸素を抑える抗酸化食品、例えばビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどは、パセリなどの緑色野菜や海藻に含まれています。

とは言っても、肉は貴重なタンパク源ですから食べない訳にはいきません。年を取ったらとくに、肉を食べる必要があるのです。ただ、肉を食べたら野菜も食べるというように、バランスよく食事することです。

  • 運動

運動は、有酸素運動をしてください。水に近いさらさら汗はいい汗で匂いませんので、さらさらの汗をしっとりとかくことが大事です。20分~40分程度の毎日のウォーキング十分ではないでしょうか。ただし、高齢の方は、毎日より隔日の方が効果があるそうです。

  • ストレス

ストレスのない社会というのはないので、少なくともにおいについてストレスをためこまないように、においを気にしすぎないことです。精神的・身体的な清潔を保てば、においを気にする必要はありません。

  • 入浴・洗濯

身体に付いた皮脂や汗は酸化すると体臭になりますので、入浴でこまめに洗い流すことが必要です。

特に、皮脂やアンドロステノールは頭皮や首筋、耳の後ろなど頭部~上半身に多く分泌しますので、髪の毛や顔、首筋を丁寧に洗いましょう。

さらに、身体に付いた皮脂や汗は下着などの衣類にも付着し、体臭を増強しますので、下着などは毎日取り替え、皮脂や汗が染みこまないように衣類はこまめに洗濯しましょう。

以上、加齢臭(おやじ臭)についてお話ししてきましたが、体臭は自分ではなかなか気がつかないものです。

最も良いチェック方法は、恋人や奥さん、家族などに確認してもらうことです。特に、女性は嗅覚に敏感ですし、加齢臭を良く知っているので、「匂ったら、遠慮なく言って」と日頃から頼んでおきましょう。

最後に、加齢臭は女性にもあります。特に閉経後は男性ホルモンが増えてきますので、50歳を過ぎたら体臭の変化を少し気にするようにしましょう。

デハデハ

 

 

広告