皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

今日、パスポートの更新に行ってきました。そこで、係の女性職員(ちょっと可愛い人でした)と言い合いになってしまいました。

何が原因かと言いますと、私の名前のローマ字表記についてです。

私の氏名はツムラ ケンイチロウ(津村 建一郎)ですが、これをパスポート用にローマ字書きすると・・・

Kenichiro Tsumura

となります。

姓のTsumuraは良いとして、問題は名の方の kenichiro です。

名のkenichiroをそのまま読むと「ケニチロ」となります。これは私の名前の発音ではありません。私の名前の発音は「ケンイチロウ」であって、ケニチロではないのです。

そのことを係の女性に言ってローマ字表記を

Ken-ichirou

と出来ないかと尋ねたところ、ダメだと言われました。その理由は・・・

  • 「-(ハイフン)」が使えるのはMiddle nameがあるときだけ
  • 規定で、最後の「ウ」は省略する

と言うことだと言います。

向こうは「規則だ!」と言い、こちらは「ケニチロは私ではない!」と、言い合いになりました。

この理屈でいくと、アナウンサーの安住 紳一郎(あずみ しんいちろう)さんの名前は shinitiro=シニチロ と死にそうな名前になってしまいます。

前置きが長くなりましたが、今日は、ローマ字は何のためにあるのかを考えてみたいと思います。

 ローマ字の起源

現在は、「ローマ字を日本語と英語を結ぶ中間文字」と解釈している人が多いのですが、ローマ字の起源を探ると、近代の日本政府が「新しい日本語」としてローマ字表記を打ち出したとのことです。

漢字と仮名が混在する日本語をマスターし、無限に感じられる漢字を多数覚えることが、日本国民の西洋化教育を妨げている。そこで、漢字や仮名を廃止し、世界共通で使われているローマ文字を使った表音文字に日本語を変えるのだぁ~~~~! ということで、日本の文明開化を促進させるためにローマ字化する、との判断だった様です。

確かに日本人が、日本語を習得して、英語などの外国語にたどり着くまでには相当な時間が必要です。

例えば、犬から英語のdogにたどり着くまでに、日本人は・・・

いぬ ⇒ イヌ ⇒ 犬 ⇒ 戌、狗

をマスターして、初めて英語のdogに到着するのです。

これがドイツ人であれば、ドイツ語の hund=犬 を覚えれば、すぐに英語(外国語)のdogに取りかかれるのですから、日本人との差は歴然です。

しかし、この日本語の表音文字化政策は太平洋戦争を挟んで、いつの間にか忘れられていきました。

この表音文字化政策の合理性は、それなりに理解出来ますが、戦後の旧文部省の立場は「ローマ字は日本語と外国語の橋渡し的存在ではなく、あくまで日本語である」と、していました。

そうすると、不可解なことがあります。次の写真↓は典型的な日本の交番の写真ですが、

ご覧の様に、ローマ字で「KOBAN」と書いてあります。

これを当局は「コーバン」と読ませたいようですが、どう見ても「コバン=小判」としか読めません。日本人向けの表示であればわざわざローマ字にする必要はなく、漢字で「交番」とすれば済むことです。

一方、日本にいる外国人が解る様に・・・と言うのであれば、ローマ字ではなく英語でPolice, Police box, Police stationなどと書けば済むことではないでしょうか。

と言うことで、現在では日本語としてのローマ字の存在価値はほぼ消滅している・・・と言っても過言ではない状態です。

 

 それでもある程度は役立っている

役立っているのは、日本人と言うよりは、日本語を習っている外国人にです。

日本語を勉強している外国人での、日本語を覚える順番は、

ローマ字 ⇒ カタカナ ⇒ 平仮名 ⇒ 漢字

だそうで、特に日本語の発音はローマ字で覚えるのが早い様です。

近代の日本政府のローマ字化政策が、奇しくも外国人に役立っているという皮肉な状況が生まれています。

また、日本の児童にとっても、ローマ字を国語の時間に習うことで、ABC・・・に慣れることが出来、英語への拒否反応が薄まります。

そして、現代の私達にとってローマ字が最も役立っているのは、パソコンやタイプライターのキーボードです。日本語のローマ字表記は英文キーボードでの日本語入力を極めて容易にしています。

 ローマ字表記の乱れ

ローマ字の表記法にはヘボン式とか訓令式など複数の表記法や規格があります。

しかし、英語がかなり浸透している現代日本では、ローマ字の表記法が色々と乱れています。

例えば、「オー」という音に対してはo, ō, ô, oh, ouなどが使われ、「チュ」の音に英語読みのcyu(ローマ字表記ではchu または tyu)が使われたり、「ジョ」の音に英語読みのjyo(ローマ字表記ではzyo またはjo)になったりしています。

ローマ字表記では撥音「」は「n」で表しますが、例外として「b」「p」「m」の前では「m」を使うようになっています。例えば、新橋は  shinbashi ではなく simbashi となります。

問題の「ケンイチロウ」ですが、撥音の後に母音やヤ行音が来てナ行音と区別できなくなった場合は、旧ヘボン式では間に「-(ハイフン)」を入れ、修正ヘボン式および訓令式では「‘(アポストロフィ)」を入れるとのことですので、Ken-ichirou とか Ken’ichirou となります。ただし、パスポートの表記規則では❌で、使えません。

また、助詞の「は」「へ」「を」は、現代仮名使いに準じて、それぞれha, he, wo と書きます(ローマ字表記ではそれぞれwa, e, o)。

駅名などでは独特のローマ字表記がされていて、千葉都市モノレール千城台(ちしろだい)駅の駅名は「CHI SHI RO DAI」と記載されています。また、「新横浜」などの「新」ではShinの後に「-(ハイフン)」を入れて Shin-Yokohama としています。

この様に、現代のローマ字は英語と日本語を結ぶ架け橋的存在であり、その表記方法は限りなく英語の発音に近いものになっています。

5月21日に、河野外相は日本人名のローマ字表記を「名⇒姓」ではなく「姓⇒名」にすることが望ましいと公表しました。つまり、「Shinzo AbeではなくAbe Shinzoとしましょう」ということです。

これは即ち、出来るだけ本来の発音どおりにローマ字表記をしたい・・・という政府の意思表明と取ることができます。ローマ字は本来、この様に発音を文字化するためのものですよねぇ。

そうであれば、「ケンイチロウ」は発音のとおり Ken-ichirou あるいは Ken’ichirou としてしかるべきではないでしょうか! 

プンプン😠

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