皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

今日は、英文和訳の基本中の基本と言われている、andとかorの接続詞の訳し方についてお話しします。

andやorの訳し方を今さら教えてもらわなくても・・・と思っているそこのアナタ! 次の英文を正しく訳せますか?

In addition, a thorough knowledge of specific requirements for different types of medical documents, and keeping up to date with the relevant guidelines is a must. ・・・ (1)

(1)の和訳例: さらに、多岐にわたるメディカル関連文書の特定の要求事項について詳細な知識を持つこと、そして関連するガイドラインについての知識を常にアップデートしておくことは必須です。

そうそう、そんな感じに訳せばいいんじゃない⤴ 。

では、そんなアナタにお伺いしますが、この英文の主動詞は is(a must) ですが、主語の部分には二つのトピックスが書かれているのに、何故、be動詞の 単数形 is なのでしょうか?

 等位接続詞: and, or, for,but ・・・

接続詞には、andやorのように同じレベルの複数の語句を結ぶ「等位接続詞」と、whenやasのように主節に従属節を結びつける「従位接続詞」があります。

今日は、前者の等位接続詞についてお話ししましょう。

 同じレベルの語句を結ぶ

等位接続詞のひとつめのルールは、 A and B の形で、AとBが同じ品詞-名詞と名詞 とか 形容詞と形容詞 とか 動詞と動詞 など-を接続することです。

名詞同士: I like apples and peaches. (私はリンゴとモモが好きだ。)

形容詞同士: She loves gorgeous and executive jewels. (彼女は絢爛で高価な宝石をこよなく愛する。)

動詞同士: She loved but broke up him. (彼女は彼を愛していたが別れた。)

では、次の英文のandとorはどの語句とどの語句を接続しているでしょうか?

The latter can alleviate immunosuppressive mechanisms in the cancer microenvironment and boost vaccine performance by appropriate stimulation or modulation of the immune system. ・・・ (2)

andは同じ品詞を結ぶのですから、andの後に boost=~を増強させる という動詞があることに気付かなければいけません。そして、andの前の語句から動詞を探すと alleviate=減弱させる、和らげる が見つかります。

したがって、この英文は The latter can alleviate・・・and boost~~~ という文型になっていることが解ります。

orも同様に、同じ品詞を結ぶのですから、orの後に modulation=調節 という名詞があることに気付かなければいけません。そして、orの前の語句から名詞を探すと stimulation=刺激 がみつかりますので、ここは stimulation or modulation の形になっていることが解ります。

(2)の和訳例: 後者は、がん微小環境下での免疫抑制メカニズムを減弱させ、そして、(宿主の)免疫系の適切な刺激または調節によってワクチンの働きを増強することができる。

この第1のルールは、andやorで対になっている語句を探すときに極めて便利なルールです。

 結ぶ語句が3つ以上あるとき

等位接続詞のふたつ目のルール: 結ぶ語句が3つ以上あるときは、最後の語句の前だけにandやorを入れ、その他の語句は「,(カンマ)」で区切る。

例文: I like apples, grapes, bananas, kiwis and peaches.

通常、接続詞の前には「,(カンマ)」を入れませんが、ひとつひとつの語句が長いときや、語句の中に更に接続詞があるような場合には、区切りを明確にするために「,(カンマ)」を入れることがあります。

この場合も、繋がれる品詞は全て同じになります。

では、次の英文のandはどの語句を接続しているでしょうか?

Drugs or physical treatments can mitigate the immunosuppressive cancer microenvironment and include chemotherapeutics, radiation, indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO) inhibitors, inhibitors of T cell checkpoints, agonists of selected TNF receptor family members, and inhibitors of undesirable cytokines. ・・・ (3)

最初のandの後ろには include=含む という動詞が来ていますので、このandの前の語句に動詞があるかを探すと、 mitigate=軽減する、和らげる が見つかります。また、このandの前には「,(カンマ)」がありませんので、 Drugs or physical treatments can mitigate ・・・and include~~~ という文型になっているのが解ります。

では、二番目のandはどうでしょうか? こちらは少々込み入っています。

二番目のandの後ろには inhibitors of undesirable cytokines=好ましくないサイトカインの阻害薬 という名詞が来ています。そこでこのandの前にある名詞を探すと、まぁあるはあるは沢山名詞が並んでいます。しかし、それらは「,(カンマ)」で区切られていますので、最初の「,(カンマ)」の前にある名詞を探すと、 chemotherapeutics=化学療法 が見つかります。

以上の事から、二番目のandの文型は A, B, C, D, E, and F であることが解りましたか? ここで、AからFの各語句はかなり長い単語であるため、各々の区切りが解る様に「,(カンマ)」で区切ているのでした。

 和訳文での接続詞の表現

英文でのandやorなどの接続詞の表記方法にはこの様な明確なルールがあるのですが、それを翻訳する日本文での接続詞の表記には明確なルールというものがありません。

一般的に言われているのは、接続するものが3つ以上ある場合は・・・

最初の語句の後に と/及び を付け、それ以外は「、(読点)」で区切る

    (例: 私はリンゴとブドウ、バナナ、キウイ、モモが好きです。)

ということらしいですが、文法やましてはルールのレベルにはなっていない様です。

ですので、和訳する時は解りやすい様に表現すればよく、英文のandやorの位置と合せる必要はありません(もちろん、合せてもいいのですが・・・)。例えば、次の様な表現が可能となり、そのどれもが正しい表現となります。

  • 私はリンゴそしてブドウ、バナナ、キウイ、モモが好きです。
  • 私はリンゴ、ブドウ、バナナ、キウイ、モモなどが好きです。
  • 私はリンゴブドウバナナキウイモモが好きです。
  • 私はリンゴ、ブドウ、バナナ、キウイ、それにモモが好きです。
英文(3)の和訳例: 薬物、即ち、理学療法は免疫抑制的ながん微小環境を緩和し、それには化学療法放射線療法、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害薬、T細胞チェックポイント阻害薬、選択的TNF受容体ファミリーメンバー賦活薬、好ましくないサイトカインの阻害薬などがある。

 X of A and Bの訳し方

以上の様な接続詞の解説は、ちょっとした英文法の参考書なら出てきますが、翻訳の現場で遭遇する文型はもう少し複雑です。例えば、次の様な感じです。

In eukaryotes the processes of DNA replication and cell division occur at different times of the cell division cycle. ・・・ (4)

上で説明したように、andの直後に cell division=細胞分裂 という名詞がありますので、andから前を遡っていくと直前に DNA replication=DNA複製 という名詞がありますので、このandの文型は DNA replication and cell division という形になっています。

と、ここまではいいのですが、そうすると、DNA replicationの前にある the processes of がどの語句を修飾しているのかが問題となります。

 重複を忌み嫌う英語

英語は重複を極端に嫌がる言語です。同じパラグラフや同じ文中に同一語句が複数回出てきますと、言い換えるか、代名詞にするか、あるいは省略します。

例えば、次の様な英文は忌み嫌われます。

I bought a dozen of apples and a dozen of eggs.

日本語であれば「12個のリンゴと12個の卵を・・・」と繰り返して表現しても別段、気になることはありません。しかし、英語では a dozen of の繰り返しがどうにも我慢ならないようです。

そこで、省略が起こる訳ですが、これが我々翻訳者を、ひいては我々日本人を惑わし、悩ませるのです。

例文の様に、接続される語の前に重複する語句がある場合は、後ろの方の重複を省略して、

I bought a dozen of apples and a dozen of eggs.

とします。 これを X of A and B の形と呼びます。

 数学の分配の法則

X of A and B の形を中学の数学で勉強する分配の法則に例えてみましょう。

X ×(A+B)= XA + XB

この様に、Xは分配の法則でAとBの両方に掛かっている場合が殆どなのです。

逆も同じで、(A of X)と(B of X)がandやorの接続詞で接続されている場合は、前の of X を省略して A and B of X と表現します。

そして、この形の英文を和訳する時は

「XA及び/とB」 又は 「A及び/とBX」

という具合に必ず「の」を入れて訳すことに注意しましょう。

以上の様に、A and B の形を和訳する時には「A and B」のさらに前後にある語句に注意を払いましょう。思わぬ省略が潜んでいるかもしれません。

英文(4)の和訳例: 真核生物において、DNA複製のプロセスと細胞分裂のプロセスは、細胞(分裂)周期の異なった時点で発現する。 ⇒ the processes ofが重複していることに注意!

 英文(1)は省略のかたまり

以上の説明に基づいて、冒頭に示した英文(1)をもう一度じっくりと眺めてみましょう。この文には省略が沢山隠れています。

In addition, a thorough knowledge of specific requirements for different types of medical documents, and keeping up to date with the relevant guidelines is a must. ・・・ (1)

この文を訳す時に注目すべきポイントは、a thorough knowledge of と andの前の,(カンマ) と 最後の is a must です。

andの前に「,(カンマ)」があると言うことは、そこで文が大きく区切られると言うことで、andの前の語句の集団と後の語句の集団はそれぞれ別の意味をもっているということです。

そして、 最後の is a must の is が be動詞 の単数形と言うことは、 is の前に来る主語が単数形だと言うことです。 is の前で単数形を意味する語句は、ずっと遡って a thorough knowledge しかありません。

以上の事を考え合わせると、この文の形は次の様になり 

X of A and B is a must

分配の法則から・・・この文の元の形は

 X of A is a must and X of B is a must

であったことが解ります。

従いまして、英文(1)を省略なしの元の形に戻すと・・・

In addition, a thorough knowledge of specific requirements for different types of medical documents is a must, and a thorough knowledge of keeping up to date with the relevant guidelines is a must. ・・・ (1’)

英文(1’)の和訳例: さらに、多岐にわたるメディカル関連文書の特定の要求事項に関する十分な知識必須でありそして関連するガイドラインを常にアップデートしておくための十分な知識必須である

この例文の様に、複雑な接続詞のある英文を訳す場合には、同時に、省略の有無を見抜くことが重要になってきます。

どうです!この辺がメディカル翻訳の難しさであり、醍醐味なのです。

デハデハ

令和おじさん

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