皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

今日は、時を表す前置詞の in, on, at について考えてみたいと思います。

早速ですが、次の英文のカッコに入る前置詞[inかonかatになります]は何でしょうか? この文は、完全股関節形成術(total hip arthroplasty)に関する臨床試験の報告書の一節です。

All patients were seen for postoperative followup  ① 3 weeks (usually for cast or brace removal). They subsequently were seen  ② 6 weeks, 3 months, 12 months, and annually thereafter.・・・ (1) <標準和訳は、文末にあります。>

✨ 基本的な使い方

まずは、時を表すin, on, atの基本的な使い方をおさらいしておきましょう。

英語では、「~に」と時を表現するときに前置詞を使い分ける必要があります。例えば・・・

  • She goes to bed at eleven every night.      [時刻]
  • They don’t go to school on Monday.           [曜日]
  • Swallows come to Japan in May.              [月]
  • We can appreciate cherry blossoms in spring. [季節]

という感じです。 イメージ的には下図↓ の様になります。

英語文化では基本的に1日(day)が単位になるそうで、日付・曜日の場合が on で、それより短いと at、長いと in を用いているようです。

この基本的な使い方に従うと、上述の英文(1)の( ① )は3 weeksとdayより長いので ①=in となり、同様に、( ② )も後に続く6 weeks, 3 months等はdayより長いので ②=in とすれば良さそうに見えます。

✒ 前置詞inの範囲

前置詞inは1日(day)より長い、週とか月とか年を導きますが、ある程度の幅の中で・・・と言う感覚になります。

例えば上で示した Swallows come to Japan in May. では、暖かい地方では4月の終わりか、5月の頭にはツバメが飛んできているでしょうが、寒い地方では5月が終わる頃にやっと飛んでくる・・・という様に、「5月に」と言いながら、その範囲は1ヶ月程度になります。

同様に、in 2018 と言えば「2018年の中」と言うことですからallowanceとしては365日あることになります。

元々、inの意味するところは下図 ↓ の様に枠の中と言うことですから、in May と言えば枠は1ヶ月、in 2018 と言えば枠は1年、in 2 weeks と言えば枠は2週間の中・・・ということになります。

inのイメージ

✒ 前置詞atの範囲

一方、前置詞atは1日(day)よりずっと短く、殆どピンポイントを指しています。

上記の例文の She goes to bed at eleven every night. で言えば、就寝する時刻は、午後10時でもなければ、深夜0時でもない、まさに午後11時という感じです。

前置詞atのイメージは下図 ↓ の様に極めて狭い範囲となります。

 臨床試験ではat

以上を踏まえて、最初の英文(1)に戻ってみましょう。

( ① )をinにしますと、後に続くのが3 weeksですから、allowanceとして 3週間±1週間 くらいが許されてしまいます。つまり、inにしますと、最も早ければ2週間、最も遅ければ4週間程度になってしまいます。

英文(1)では手術後3週間でフォローアップの診察をすることになっていますが、術後ですので、術後2週間の状態と術後4週間の状態では相当な違いが出てくると予想されます。

新しい治療法や薬剤の評価を正確に行うためには、臨床試験に参加している被験者全員を同じ条件下で評価する必要があります。しかし、inの状態では、ある被験者は術後2週目で評価され、別の被験者は術後4週目で評価された・・・と言う状況は避けねばなりません。

つまり、臨床試験で術後3週間と言えば、手術が終わった日からきっかり3週間後、即ち、術後22日目(3週間後の、手術が終わったのと同じ曜日)に評価をしなければいけません。

同様に、3ヶ月後と言えば、きっかり3ヶ月後の同じ日(例えば、手術が4月2日であれば、7月の2日)に評価をします。1年後と言えば、きっかり1年後の同じ月日(例えば、手術が2017年4月2日であれば、2018年の4月2日)に評価をしなければなりません。

以上の事から、英文(1)では( ① )( ② )も、allowanceを許さないピンポイントを意味する ”at” にする必要があります。

実際の例を見てみましょう。

  • Post-stroke depression: Predictive factors at one year follow-up (脳卒中後のうつ状態:1年後のフォローアップ時の予測因子)[論文のタイトルです。脳卒中を起こした日からきっかり1年後という意味です]
  • Immunizations at 3 Months (生後3ヶ月での予防接種)[妊婦さん向けの英文パンフレットのタイトルです。生まれてからきっかり3ヶ月目に予防接種を・・・という意味です]

以上の様に、月や年にくっつく前置詞だから”in”という原則は、実際の英文では必ずしもあてはまりません。

Nativeの人達は、allowanceをどの程度許すかで、 in, on, at を選んでいる様に思われます。如何でしょうか?

デハデハ

英文(1)の和訳: 全ての患者は3週後の術後フォローアップ(通常は、ギプスや添え木を外すため)の診察を受けた。続いて、6週間後、3ヶ月後、12ヶ月後、その後は年1回フォローアップの診察を受けた。