こんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

今日はミトコンドリア(mitochondria)についてお話しします。

最近の医学記事で「ミトコンドリアDNAは父親からも遺伝?」といタイトルを見つけました。これは驚きです。

科学・生物学の分野では長きに渡って、ミトコンドリアDNAは母系遺伝で、母親から子孫に受け継がれると信じられていました。しかし、どうも父親からも遺伝していそうだ!ということが解ったのです(詳しくはこちら)。

そこで、ミトコンドリアについて色々と調べてみると、意外な事実が判明したので、お知らせします。

| ミトコンドリアとは

✒ ミトコンドリアは何処にある?

ミトコンドリアは細胞の中にある小器官(オルガネラ:organelle)です。

生物の代表的な細胞の構造は次のようになっています。

 (Original画像)

この図の中で、左側にある柿色のイモムシの様な形をした小器官がミトコンドリアです。

地球上に生息している動植物(細菌や微生物を含む)の細胞は、基本的にこの図にある小器官を全て持っています。

そして、ひとつの細胞の中には数10個から多いと数千個のミトコンドリアがあります。

✒ ミトコンドリアの構造は?

学校で習う生物学の教科書に出てくるミトコンドリアの構造は次のようなものです。

 

左がひとつのミトコンドリアの構造で、右は実際の細胞内のミトコンドリアの顕微鏡図です。正確に言いますと、顕微鏡で見るためには細胞をパラフィン等で固定して、薄くスライスした標本にしますので、右の顕微鏡図はミトコンドリアの断面と言うことになります。

🎯 ひとつ目の真相

上に示したこのミトコンドリアの構造図は、私達が見慣れている極めてポピュラーな図で、なんの抵抗もなく うんソウソウ👍 と納得で眺めているのではないでしょうか。

 

ところがbut、そのときthenでして、この図はあくまでミトコンドリアの断面にすぎず、ミトコンドリアの本当の全体像は次のようになっているのです。

この様に、本当のミトコンドリアの全体構造は木の枝のような形です(赤い部分は枝の中身)。画面の後ろに見える青い枝の様なものも全てミトコンドリアなのです。

この一部をスライスして顕微鏡で見ているので、ミトコンドリアは私達が見覚えのあるイモムシ形だと信じ込まされていたのです。と言うか、当の科学者達もそう思い込んでいたのです。

この様に縦横に張り巡らされた枝の様なミトコンドリアですから、標本をスライスした場所によってその切り口は様々な形になります。

しかし、ミトコンドリアはイモムシ形と信じ込んでいた科学者達は、その様々な形態の切り口を説明するために「ミトコンドリアは経時的に様々な形態に変化するもの」と解釈していました。

先入観とはかくも恐ろしいものなのです。

ミトコンドリアの構造に関しては、ブルーバックスから「ミトコンドリア・ミステリー」と題して本が出ています。表紙のイラストが正にミトコンドリアの全体構造を表しています。




✒ ミトコンドリアの働きとは?

実は、生物が生きていくために、ミトコンドリアは不可欠なのです。

ミトコンドリアは細胞が活動していくためのエネルギーを作り出しています。細胞が活動することで、私達は生きていられるのですから、ミトコンドリアがエネルギーを作ってくれないと、私達は生きていけない・・・と言うことです。

細胞のエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP:adenosine triphosphate)という物質として供給されます。

ミトコンドリアの中にはATP合成酵素(ATP synthase)という酵素があって、これが高速でATPをジャンジャンと作り出しています。

ですので、ヒトを含む動物の活動力(体力とか持久力とか免疫力)にミトコンドリアの機能が直接的に影響を与えます。つまり、ミトコンドリアが元気で働いてくれれば、生体も元気でいられる・・・ということです。

最近の研究では、老化やガン・生活習慣病・糖尿病・記憶力低下・アルツハイマーといった状態もミトコンドリアがかかわっていることがわかってきました。

そして、卵子の中のミトコンドリア(正確にはミトコンドリアDNA)が子孫に伝わっていくのだとされています。つまり、母親の活動性が卵子の中のミトコンドリアDNAとして、子孫に受け継がれていくことになります。

競馬の世界では「脚の速い牝馬(メス馬)の子供は脚が速い」と言われますが、それは母馬のミトコンドリアが仔馬に遺伝している可能性が高いからなのです。

と、言うことは、自分の母親の家系に長寿が多ければ、自分もその家系のミトコンドリアを受け継いでいる可能性が高いので、長生きできるかも・・・。

🎯 ふたつ目の真相

ところが、米国科学アカデミー紀要で発表された最新の研究結果によると、ミトコンドリアが父親と母親の両方に由来することが示された、とのことです。

調査したのは3家族と少ないのですが、これらの家族において父親の精子由来のミトコンドリアDNAが数世代にわたって受け継がれていることが確認されました。

従来、精子が卵子内に侵入(つまり、受精)する際に、精子内のミトコンドリアDNAは破壊されると考えられてきましたが、真実はそうではないらしいのです。

コメント: 精子の頭部にはいわゆるヒト遺伝子(DNA)が入っていて、それを卵子内に運ぶ役割をするのですが、その精子を泳がせるための鞭毛を動かすために、少量のミトコンドリアも精子内に存在しています。

 

✒ ミトコンドリア・イヴ

ミトコンドリアが母系にしか遺伝しないと思われていたため、人々のミトコンドリアDNAを追跡していけば、人類の起源が解るのでは・・・ということで、様々な研究が行われ「ミトコンドリア・イヴ(Mitochondrial Eve)」が探し求められました。

その結果、イヴは16±4万年前にアフリカの大地溝帯に生存していたと推定され、1987年の科学雑誌Natureに掲載されました。その結果、現代の人類は、アフリカに端発するミトコンドリア・イヴというひとりの女性の子孫である・・・という解釈が生まれてきました。

ミトコンドリアはエネルギーを生み出す重要な器官であるため、突然変異が厳にコントロールされ、古代から殆ど変わっていない、とするのがこのミトコンドリア・イヴ理論の根拠となっています。

🎯 三つ目の真相

ところが、受精の際に父親のミトコンドリアDNAが遺伝していた・・・となると、ミトコンドリア・イヴから現代人までの間のミトコンドリアDNAの変化は、必ずしも、母系だけとは限らなくなってきます。

つまり、人類はアフリカに端発するミトコンドリア・イヴというひとりの女性の子孫である・・・というのは言い過ぎであり、歴史の途中で別系統の男性のミトコンドリアDNAが混在してきた可能性があり、その男性の母系はミトコンドリア・イヴとは異なる系統・・・と言うことになります。

従いまして、人類の起源のひとつの可能性(ただし、かなり強い可能性)として、ミトコンドリア・イヴがいるというのが、新しい真相の様です。

いや~、科学の常識もかなりダイナミックに変わっていくのを目の当たりにした感じですね。まさに「かつての常識は現代の非常識」ということで、現代の常識も未来では非常識になってしまうかもしれません。

デハデハ

広告