皆さんこんにちはPartner of Medical Translatorsの津村です。

今日は、日本語の時制(tense)、特に動詞の時制について考えてみたいと思います。

日本人が英語を学ぶときに悩む大きな問題のひとつとして「時制」があります。学校で習った英語の授業を思い出すと、英語の時制には基本形として過去形、現在形、未来形の3種類があり、その各々に進行形;過去進行形、現在進行形、未来進行形3種類があります。さらに、基本形の各々に完了形と完了進行形があります。

単文(主語と動詞がひとつずつ)の英語なら比較的解りやすいですが、単文が絡み合った重文や複文になると、それぞれの時制がこんがらかってしまいます。

✨ 日本語に時制はある!?!

皆さんは学校で次のように習いませんでしたか?

時制 英語 日本語訳
現在形 I go to Asakusa. 私は浅草に行きます
過去形 I went to Asakusa. 私は浅草に行きました
未来形 I will go to Asakusa. 私は浅草に行くでしょう

なので、日本語の動詞にも時制変化があるのだ!と信じている日本人が結構いるのです。

しかし、よ~~~く思い出してください。上のような日本語の動詞の変化を教わったのは 英語の授業 だったはずです。

国語の時間で習った動詞の変化は「る、る、れよ、れろ、れれれのレ・・・」という未然・連用・終止・連体・已然・命令であって、時制ということについては教わらなかったはずです。

そうなのです! 日本語の動詞には時制が無い のです。もう少し控えめに言えば、時制が曖昧なのです。

一部には、日本語(動詞)にも「過去と現在」という時制がある!!!と主張する人がいます。その人達の説明によると・・・

現在形: 私は浅草にいきます。・・・・・(1)

過去形: 私は浅草に着きました。・・・・(2)

だそうですが、(1)の日本語の意味は浅草にはまだ出発しておらず、「浅草にこれから行く」という近未来を表しているのです。ゲームばっかりしているぐうたら息子にお母さんが「も~、宿題終わったの?😠」というと、息子が「宿題?するよぉ~」という時の「する」と同じで、現時点では宿題を全くしておらず、これからやおら始める・・・という状態です。従って「ます」は現在の状態(現在形)ではないのです。

現在、まさに浅草に行っている状態(いわゆる現在形)の日本語表現は;

真の現在形: 私は浅草に向かっているところです。

となります。

(2)の日本語の意味は浅草に「たった今、到着した」という状態を表していて、過去形と言うよりは、こちらの方が英語で言う現在形に近いものです。

✨ 日本語の動詞はアスペクト

私の意見ですが、日本語の動詞には未了と完了のふたつのアスペクトしかないと言えます。

未了: 庭のチューリップが咲きます。

この「咲きます」はまだ咲いておらず、「咲く」という動作はまだ行われていない=未了 と言うことです。一方、

完了: 庭のチューリップが咲きました。

というのは、「咲く」という動作が終わった=完了 ことを意味しています。

具体的な例を見てみましょう。次の文章は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」書き出し部分です。

ある⽇の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな⽟のようにまっ⽩で、そのまん中にある金⾊の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう

これは、ただ今現在の状況を描写していますが、赤字の動詞のいわゆる時制を見ますと 現在⇒過去⇒現在⇒未来 となり、いかにも日本語の動詞に時制がないことが解ります。ちなみに最後の「ましょう」は推量を表しています。

✨ 和文英訳時の時制

この様に、時制と言うことが無頓着(曖昧)な日本文を、ギチギチの時制に縛られている英語に翻訳するときには、注意が必要です。例えば・・・

今度のオペの担当は山田先生になりました。

という文を英訳する際に「~ました」にひきずられて

Dr. Yamada handled next surgical operation.

とする人はさすがに居ないでしょうが、

It was decided that Dr. Yamada handle next surgical operation.

と訳す日本人は結構います。これでも間違いではないですが、英語的に重要な語句は「山田先生」なので、これを主語にした方が英語らしくなります。なので、

Dr. Yamada will handle next surgical operation.

と未来形にするのが、一番英語らしい表現と言えます。

この様に和文英訳の時には和文の表現に捕らわれることなく、文の意味として英語の時制を考えることが大切です

デハ・デハ

 

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