皆さんこんにちは、Partner of Medical Translatorsの津村です。
ブログを2~3日お休みしていましたが、当ウエブサイトの大幅な衣替えをしていましたので、それが一段落するのを待っていました。
今回もまた、私のクラスの受講生から「sameとsimilarの違い」について質問がありましたので、その時にどの様に対応したかを少し述べてみたいと思います。
もくじ
✨ Sameとは
まずは、sameの基本的意味と使い方について辞書で調べてみましょう。
- 【代名-1】《the ~》〔前述のものと全く〕同じ[同一の]もの[人・こと]
- 【代名-2】極めて類似した[ほぼ同一の]もの[こと]◆通例、the same。
- 【形-1】〔前述のものと全く〕同じ、同一の◆通例、the sameとなるが、ビジネスの場面ではtheが省略される。
- 【副】同様に、同じように、同じやり方で
これらをまとめると、sameは「全く同じ物または、違うものだが内容や見かけが同じ」という感じのようです。例えば・・・
She is the same lady I saw yesterday at the hospital. (1)
⇒ 彼女は昨日私が病院で見た夫人と同じだ。
この場合のsameは、Sheとladyが同一人物(全く同じ物)だと言う意味です。
一方、次の文では・・・
His idea is same as mine. (2)
⇒ 彼のアイデアは私と同じだ。
彼(he)と私(I)は別人なので、全く同じアイデアと言うことはないでしょうが8~9割は同じ(違うものだが内容や見かけが同じ)というニュアンスです。
ちなみに、(2)の文の後には通常、So・・・とつづき、His ideaを支持する様な語句が続きます。
✨ Similar
次に、similarの基本的意味と使い方について辞書で調べてみましょう。
- 【形-1】〔同一ではないが〕類似の、同様の
- 【形-2】《数学》〔図形が〕相似(形)の
つまりsimilarは、sameほどではないが「かなり似ている」=「まったく同じではないが、似通っている」というニュアンスです。例えば・・・
His idea is similar to mine. (3)
⇒ 彼のアイデアは私と似ている。
今度は(2)のsameとは少し違い、ほぼ同じだが細かいところでは違っている、おおよそ6~7割はおなじだが、3割程度は 違う という感じです。
ですので、(3)の文の後には通常、But・・・とつづき、どこが違っているかの説明が添えられます。
ついでに、sameに似た単語として、equalとidenticalが有りますが;
- identicalは、同じ物また、違う物だが、内容や質、見かけが同じということ。sameの形式張った言い方(文語)と言えるでしょう。
- equalは、同じではないが、見た目や量、数値、価値などが同じということです。つまり、2×3と6は見た目は違っていますが、数値(2×3=6)としてはequalということです。
✨ 前置詞と冠詞
same につく冠詞ですが、必ず the を付けましょう。多くの日本人は、same に the を付け忘れてしまいますが、same は「同じ」という意味で、「ある特定のなにか」というニュアンスが強いので、a でななく 定冠詞のthe になります。
これに対してsimilar は「似ている」、つまり「他にも何種類かある中のひとつ」というニュアンスになり、特定したひとつではないので 、今度はtheではなく不定冠詞のa を付けます。
次に、前置詞ですが、sameは「ある特定のなにか」というニュアンスが強いので、特定のアレと同じ・・・という意味のある前置詞のasを使ってsame as~の形になります。
一方、similar は「他にも何種類かある中のひとつ」というニュアンスですので、そのひとつに向かっていく・・・という意味のある前置詞のtoを使ってsimilar to~の形になります。
多くの初級翻訳者が両者を入れ替えて覚えているようで、same to~としたり、similar as~としていまうので、気をつけましょう。
✨ いよいよ本題
以上に述べたのは、sameとsimilarの基本とその違いでしたが、今回の受講生の質問は次の英文の内容についてでした。
When 2 clinical trials compare 2 new drugs using the same comparator and study design in similar patients, it is tempting to compare the results to decide which of the new drugs is better. (4)
⇒ 同じ対照薬と試験デザインを用いて、類似した患者集団を対象にした2本の臨床試験において、2種類の新薬を比較している場合、どちらの新薬が優れているかを決めるために両試験の結果を比較したくなる。
というある医学論文の一節に対する、その論文の読者からのコメントとして次の文が紹介されていたそうです。
Although both studies used the same main event used to measure efficacy, differences in the duration of follow-up, the inclusion criteria, and the dose of the drugs being tested limited the comparability of results. (5)
⇒ いずれの試験でも効果を測定するために同じ主要イベントを用いてはいたが、フォローアップの期間や選択基準、そして比較されている薬剤の投与量などに差違があり、結果の比較可能性に限界がある。
ここで、受講生が疑問に思ったことは、英文(4)ではsame study design としているが、英文(5)では試験デザインがかなり違っている・・・この様な状況下でもsame(study design)と表現してよいのか? と言うことでした。
前半で述べたように、sameとsimilarの基本の意味合いは違っているのですが、実際にそれらが使われている現場では上の例の様にかなりオーバーラップしていると言うことです。
英文(5)が正しいとすれば、英文(4)のsame(study design)はちょっと無理があると言えるでしょうが、英文(4)の論文ではこれをsame(study design)としないと論文のストーリーが成り立たなかった・・・とも考えられます。いずれにせよ、似ているかどうかはかなり主観的な部分と言えるでしょう。
こういう時には、翻訳者として悩むところですが、論文の筆者とコメントした読者の両方の顔を立てる(かなり日本人的発想!)・・・という見地から、same=同じ と、similar=類似した との中間の表現となる「同様の(な)」という訳をあてはめてみると良いのではないでしょうか と、答えてみましたが、皆さんはどうお思いでしょうか。