👉 翻訳対象の半数以上はがん(Malignant Tumor)関連!!!

前回、メディカル翻訳の大半は医薬品や医療機器の開発・承認申請関連の文書が占めているとお話しました。

今回は、別の切り口からメディカル翻訳の特徴を見てみたいと思います。

日本人の死因のトップはがん(悪性新生物)です。従いまして、医学界や医薬品業界のactivityもがんに集中しています。

また、がんに対する治療の特徴は、複数の治療法(手術や放射線、薬物など)を組み合わせることです。特に、抗がん剤治療では作用の違う3~4種類のくすりを組み合わせるのが定番となっています。従って、どの薬と治療をどの様に組み合わせるのが最も効果的で安全か?ということが日夜、検討されています。

さらに、がん治療では予防(検診)や副作用(嘔吐、疲労、脱毛など)への対応、がん疼痛への対応、終末医療、再建医療、リハビリテーション、メンタル医療など、多種多様な療法が組み合わされる高度集約治療となります。

それだけに、新たに開発される治療法や抗がん剤に関するドキュメントも種類・数量共に群を抜いていて、外注されるメディカル翻訳の半数以上はがん関係のもの・・・となります。

また、ご存じの様に、がんは正常な自分の細胞の遺伝子に突然変異が起こって、腫瘍を形成する腫瘍細胞に変身するのが病因ですので、がん関連のドキュメントには遺伝子がらみの記述も沢山含まれてきます。
この様にメディカル(医薬)翻訳のふたつ目の特徴は・・・

!!!がん(悪性腫瘍)および遺伝子関連の仕事が大半を占める!!!

ということです。

ちなみに、先進国の中でがん死亡率を比較すると、日本がトップです。つまり、日本人は世界で一番がんになりやすい・・・と思われるかもしれませんが、そうではありません。
日本がトップなのは、医療先進国だからです。

日本人の平均寿命は84歳で世界トップです。これはすなわち、日本の医療が進んでいて、幼児期の死亡が極端に少なく、また、成人になるまでに簡単な病気やケガで死ぬことがほとんどないと言うことです。一方で、がんはその潜伏期間(がん細胞が出来てからがんとして認識されるまでの期間)が20年以上と言われていますので、進行の早い白血病などの血液がんを除くと、ほとんどの場合が40歳以上での発見となります。

つまり、海外では、がんが発見される前に簡単な病気やケガで死ぬケースが多く、そのために見かけ上がん死亡率が低くなっている・・・と言う訳です。

次の特徴に移りましょう。

👉 翻訳対象の大半には統計解析が含まれている!!!

メディカル翻訳の三番目の特徴は、翻訳対象のほとんどのドキュメントに統計学を使った解析の結果が出てくる、ということです。

上で述べたように、日本を含む先進国は医療でも先進国ですので、昔のように「使った⇒効いた⇒治った」と言うだけでは、新しい治療法や新薬としては認めてもらえません。

新しい治療法や新薬としては認めてもらうには、すでに使われていてよく知られている既存の治療法や医薬品と比較して「××の点で優れている」と言うことを証明しなければなりません。

この証明のために使われるのが統計解析(Statistical Analysis)です。特にメディカルの分野で使われる統計解析のことを医学統計学(Medical Statistics)とか生物統計学(Biometrics)と呼んでいますが、メディカル翻訳者にはこの統計解析に関するある程度の知識も必要となります。

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以上、メディカル(医薬)翻訳の特徴を述べてきましたが、最後にまとめますと、
メディカル(医薬)翻訳をマスターするためには・・・
1) 医薬品や医療機器の開発~承認申請~市販後に必要とされるドキュメントの種類と内容
2) がんおよび遺伝子に関する情報・知識
3) 統計解析に関する情報・知識
などを充実させることが必須であり早道である、と言うことができるでしょう。

では、また。